バブル時代のクリスマス その2

本当にあった昭和の話

バブル時代のクリスマス その1はこちら

赤ワインの威力

まず、地面と天井がわからなくなり

水槽の中で波に揺られているような感覚になりました。

彼が何か話していますが聞こえません。

床に倒れそうですが必死に持ちこたえています。

座っていた椅子が、あれ?いつの間にバランスボールに?(なってません)

じっと座っていることさえできなくなっていました。

何故か揺れる体、、両手をテーブルについて支えました。

顔だけは笑顔を作っていたと思います。

ステーキ肉がぼやけて見えますがなんとか食べないと、、、、

また彼の機嫌が悪くなってしまいます。

食べないと。食べないと。

お肉を切ってみる。

でも、だけど、、、

どおーしてもどおーしても

食べられない。あれ?あれ?

揺れる体を支えるだけで精一杯。

フォークもナイフも持つことができないのです。

肉どころか、水すら喉を通る気がしません。

むしろ赤ワインが逆噴射しそうです。

気がつくと彼が何かとても怖い顔をしています。

私がお肉を食べないので怒っているのかな。

耳も聞こえなくなるし、目も乱視が重篤になったようです。

彼が3人見えます。

いつの間に分身の術を習得したのかしら。

忍者の家柄かしら。

いや、彼の家系は、父方がお寺。母方が医者だったはず。

お寺と医者が親族になるって、世間的にどうなの…

などと、余計なことを考え始める私。

赤ワインは、下戸の脳まで蝕む恐ろしいものです。

人様のテーブルに乱入

もうすでに人として機能していない状態の私。

彼が見かねて席を立ちました。

多分、もう私はだめだとわかってお会計を済ませようとして席を立ったのだと思います。

私は彼の後をついて、出口方向へ歩いて行こうとしましたが

どうしても真っ直ぐに歩けません。

立つだけでも困難なのに歩けるわけがないのです。

ぁぁああぁ倒れるううぅ

と思ったその時,私の目の前にテーブルが迫って来るのが見えました。

酔っ払いながらも私は、ずば抜けた危機管理能力を発揮して

両手をテーブルにバーン!

その勢いでテーブルの上の何かが倒れたような気がしましたが

覚えていません。

床に倒れるのは避けられましたが

足がよろけて近くの椅子にうまい具合に着席したのです。

まだ意識を失っていない私。

瞬きしながら自分が着席した周辺をみてみると

そこは、よそのカップルが仲睦まじく

向かいあって座っているボックス席でした。

何と言うことでしょう。

一刻も早く立ち去らなければなりません。

でも、立てない。

この場をなんとかのりきらなければと思い

平静を装って、カップルに話しかけました。

今日は素敵なクリスマスですねえ

と言ってみたけど、今にも吐きそう。

目が点のカップル。

さぞかし驚いたことでしょう。

知らないオンナが突然自分たちのテーブル席に乱入ですもの。

私は吐きそうなのをグッと堪えながら

満面の笑顔

会計を終えて気がついた彼が私を見つけて

何やってんだよ!!

と怒りながら私の首根っこを捕まえて、店の外に引きづり出しました。

言葉通り、私はひきづり出されたのです。(笑)

若さゆえの過ち

それから約一時間ほど、トイレに引きこもった私でした。

せっかくのクリスマスディナーを台無しにしたわけです。

待たされた彼は怒り心頭で、クリスマスどころではなくなりました。

その日、いったいどうやって帰宅したのか記憶にありません。

無理をしてはいけませんね。

若さゆえの過ちのひとつです。

私も彼もよくないところがあったと思います。

若かったんですね。

懐かしいクリスマスのエピソードでした。

どうぞ皆様は素敵なクリスマスをお過ごしください。

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